ガス漏れ騒動。 令和元年6月14日(金)

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お陰様で、ただいま、無事、本日の営業を終えました。
生きた心地もしない目の前のガス漏れ騒動は無事、怪我人も出ずに収束しました。消防、警察の方々のご尽力に感謝しております。
ご迷惑をおかけした方々も多いので、こちらで今日の事の顛末をお話ししておこうかと思ます。
 
午前10時30頃でしょうか、サイレンが聞こえ始めます。最初は、周りがなんだかうるさいなくらいにしか気に留めていませんでした。
普段から、救急車や、消防車がサイレンを鳴らしてきては、クルティーヌ の前にあるホテルに止まります。宿泊のお客の体調不良なのか、本当にサイレン鳴らしてきてはよく止まる止まる。
 
ですので、何台の消防車の音が聞こえようが「またか」くらいで気にも止めていなかったのですが、最初は遠すぎてよく聞き取れなかった拡声器の声が、徐々に近くに聞こえてきて、”ガス漏れ”というフレーズがとはっきり聞こえた時に初めて、「近いのか?」となりました。
 
危ぶんでいるところに、スタッフが、「シェフ、黄色いテープが貼られてます。店の前の道の両サイド」と、言ってきたので、さすがにそれはないだろうと半信半疑で外を見にいきました。
すると本当に店の入り口のすぐ左手に三角コーンが置かれ、路地を挟んだ向こうの電柱と、侵入禁止のテープで結ばれている。まさに封鎖状態。その路地の反対側30メートル先にもテープが貼られていて、店前の区間がまさに立ち入り禁止区域。ちょうどクルティーヌ は立ち入り禁止の中にすっぽりと入ったかたち。
 
ちょっと待て、これではお客様がそもそも店に入れない。
この状態で今日の営業はどうすればいいんだと語気を強め、テープの向こうにいる警察官に詰め寄った。お客様が通れないのは困るから、少しだけテープの位置をずらしてほしいと頼むも、「法的な処置なので、これ(テープ)は移動できません」の一点張り。あげく、外に出ないでくださいと言われる。
だがこちらもそれは承知できない。こちらには店の経営と、ご来店くださるお客様の信頼がかかってる。そこは食い下がってほんの少しでいいからと訴えた。
 
すると、その警察官は、目の前の大きなホテルの地下にガスが充満しているんだからできるわけないだろと話し始めた。
 
は?となって、足元を見る。そりゃ、地下は見えないが、異様なガスのうねりを感じた気がして寒気がした。
 
おいおいそれは尋常じゃないぞとなって、なんでむしろうちの店に事情を説明する人が来ないんだと詰め寄りはしたものの、そんなことより、ここは落ち着いて、正確な情報を聞き出したほうがいいと頭を切り替える。
「法的に無理とかの話よりその話(事実)をまず先に話してください」と伝えて、そこからは静かに、何が起こっているのか説明をしてもらいました。
 
その答えは、”爆発しかねない濃度のガス”が、”目の前の大きなホテルの地下に充満している”という、まさにすぐには信じられないもの。
 
これは尋常じゃない規模の災害になり得る。ここで初めてそう気付きました。
 
一旦店に戻ってまずは店内の窓やら裏口やらを締めに走る。すると裏口(入口から少し離れているだけで入口と同じようにホテル向きにある)がもろにガスくさい。
これはもうまじで危険だ。
 
そうこうしていると、見知らぬ巨漢が店の入り口のドアを開け、「いまは地下のガスをポンプで抜く作業をしているところだが、濃度が濃いから本当に危ないぞ、ここにいるならとにかく窓から離れて」。と用件だけ勝手に告げてドアを閉めた。
「おいおい、あんたは誰なんだ。」
腹立たしくもあったけれどそれは置いておいて、時計を見るともう11時をまわっている。営業の30分前だ。
 
さあ、決断しなくては。
ランチは久しぶりに満席近く、決まっていたコースの料理は万端に準備していた。だがなにより、随分前からご予約してくださっていたり、楽しみにしていますと仰ってくださっていたお客様、常連様に、こんなオープンギリギリのタイミングで営業できない旨をお伝えしなくてはいけないというところが、一番辛い。
それでも店の周囲は物々しく、全てを締め切ってもガスの嫌な匂いは店内にも漂い始め、しかもその中で火を使わないと料理は提供できないという、完全な詰み状態。
 
お客様とスタッフと妻の命を脅かす環境でのレストランなどありえない。閉めよう。
まずは急いで電話しなくては。
 
スタッフには確定していたガス漏れの事実だけを伝え、地下の話は伏せた。店を閉める準備をするよう指示を出し、元栓を閉めさせる。
さて、電話だ。いきなり繋がらない。次のお客様はどうか。電話のコールがやけに長く感じられる。コール中も頭の中ではいろいろ考える。今爆発したらどう対処するべきか。爆風で窓が割れたら。入り口がふさがったら。怪我人が出たらどう対処するか。個室からは逃げられるのだろうか・・・。時計は11時10分をさした。
 
幸か不幸か、クルティーヌ の周囲には夜営業の飲食店が多く、ランチを営業するのは当店のみ。他店が羨ましい。
 
やはり、というか、当然、お電話した時には、みなさまもう向かってくださっていたり、すでに駅についておられたり。
 
なのに、みなさま快く承諾してくださり、騒動が落ち着くまで待ってくださると仰ってくださったり、今回は残念ですが、また次回楽しみにしていますねといただいたり、お店を気遣ってくださったりと、温かい言葉ばかりをいただきました。
こんな時だから尚更心にしみる。クルティーヌ は素晴らしいお客様に支えていただいています。
 
そして、スタッフを一旦家に帰して、僕はクローズの看板を外に出したままにし、先ほどの警察官にランチ営業は閉める旨を伝えると、先ほどの巨漢がきた。どうやら警察関係者なのらしい。まずは名乗ってくれよとも思ったけれど、警察官の皆さんが、周囲のわがままな通行人の相手にしんどそうにしていて、言うのをやめた。
 
事態がまた変わって、どうやらガスの原因はホテルではなく、ホテルの一階に入っているテナントの今は閉まっている飲食店からのよう。もう一ヶ月近く閉まってる店から?となったけれど、どうやら昨夜その店のオーナーが店にはいるのを目撃されているようだ。裏口の、路地を挟んだすぐ正面のお店。多分扉の向こうにはガスがかなりの濃度になっている。駅の真横にあるホテルなので、電車も止めた。
いま、消防隊員がまさに突入しそうな感じ。(写真はその時のもの)
後から聞いた話ですが、この時、強硬に扉を壊さず、店のオーナーに連絡してくるのを待ち、鍵を使って中に入ったのは、無理に扉を壊した時のわずかな火花で引火するのを避けるためだったらしい。
 
それにしても、消防と警察の方々はこの危険な現場で対処に全力だ。逃げられない。こんなにガスが漂っていても。
 
命をかけた仕事というものを肌で感じ、これからは警察と消防の現場の方々を無条件に敬愛しようと心に決めた。
 
今となっては昼が嘘のように何事もなかったような夜ですが、営業30分前のそのときの選択は今でも間違っていなかったと確信しています。
 
何事もなくて本当に良かった。警察、消防の方々、ありがとうございました。
ご迷惑をお掛けしてしまった本日ご予約の皆様、申し訳ございませんでした。そして、ありがとうございました。
 
クルティーヌ は明日からまた頑張ります。