山鳩のロティとオリーブ

月替わりの花のコースで選べる2番目の料理を詳しく。
当初はメニューページにそのまま載せていましたが、興味のある方にのみお読みいただけるようにこちらに転載しました。

Pigeonneaux aux Olives .
山鳩のロティとオリーブ(+2,000-)   / 長胡椒(石垣島)
オーギュスト・エスコフィエ「料理の手引き(1921年)」より抜粋した料理です。

社交の場としての会食では、ウイット(機知)に富んだ会話を楽しむのがフランス流。そこで提供される料理までもウイットに富んだものであれば、三者対話(トリローグ:立場の違う三者での対話、交渉。ここでは、招く人・招かれる人・シェフ)となり、尚更に楽しく、充実した時間となります。古今東西、後世に残る秀でた料理というのは皆同じような側面を持ちますね。さて、お気付きの方もおられると思いますが、この料理の応えと思われるお話を下に記します。

主は地上に増えた人々の堕落を見て、これを洪水で滅ぼす計画を「主と共に歩んだ正しい人」であったノア(当時500~600歳)に告げ、ノアに方舟の建設を命じた。

ノアは方舟を完成させると、妻と、三人の息子とそれぞれの妻、そしてすべての動物のつがいを方舟に乗せた。果たして大洪水は起こり、それは40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。その後、方舟はアララト山の上にとまった。

40日後、ノアは鴉(カラス)を放ったが、とまるところがなく帰ってきた。さらに鳩(ハト)を放したが、同じように戻ってきた。7日後、もう一度鳩を放すと、鳩はオリーブの葉をくわえて船に戻ってきた。さらに7日たって鳩を放すと、鳩はもう戻ってこなかった。
(それは、地上が生活を送っても安全な状態になったということを示し、この一節から、鳩とオリーブは平和のシンボルと捉えられています。)

ノア601歳の1月1日に水が乾き始め、2月27日に全ての水が乾いた。

ノアは方舟から出て良いとの指示を受け、家族と動物たちと共に方舟を出た。そこに祭壇を築いて、献げ物を主に捧げた。主はこれに対して、ノアとその息子たちを祝福し、ノアとその息子たちと後の子孫たち、そして地上の全てのものに対し、全ての生物を絶滅させてしまうような大洪水は、決して起こさない事を契約し、その証として、空に虹をかけた。

旧約聖書「創世記」より抜粋。

地上を滅亡させ、それは永遠に続くのかと思わせた絶望の大災害。やっと訪れたわずかな希望。暁光。
生物への、ささやかな、しかし確実な希望を咥えて戻った鳩。
現在では、オリーブと鳩は幸せの象徴とされます。

こちらを題材に話が膨らむとフランス料理にたずさわるものとして嬉しく思います。