日別アーカイブ: 2015年11月17日

クルティーヌで触れることの出来る世界一。 「シャテルドン」

前回のブログ、「クルティーヌの得意料理」で、クルティーヌのこだわりとして、日本一の料理をお勧め致しましたので,今度はクルティーヌが誇る「世界一」をご紹介致します。

「シャテルドン」

常連の方はもうご存知だと思いますが,まだまだ知らない方も多いこの名前。
「シャテルドン」とは、世界一の「水」です。

世界一標高が高い、とか、世界一ミネラル分が多い、とか、そういうたぐいではなく,正真正銘、世界一美味しいと言われるミネラルウォーターです。

フランスの三ツ星では当然のように置いてあります。フランスのグランシェフたちはこの水を心から愛しております。どれくらいかと言うと,営業中非常に忙しいピークを乗り切ったあとは,必ず,「カズ,シャテルドンもってこい!」と言って,自らのご褒美にするくらいです。(イヴ・シャルルの話ですが(笑)

その価格も、銘醸ワイン級。それこそ三ツ星でこの「シャテルドン」を頼んだら、間違いなく驚きのお会計となります。

別名「水のドン・ペリニョン」とも呼ばれ,そのふくよかでありながら繊細な泡立ちは,他のミネラルウォーターの追随を許しません。地理、地勢、気候,加えてその土地の歴史にいたるまで、非常に多くの条件が幾重にも重なった奇跡のテロワール(土地)が生む奇跡の水です。

水にちょっと語りすぎた感がありますが、それだけの価値の水ということで,ご容赦ください。(もっと料理の方を熱く語るべきなのでしょうが,自分が携わる料理をこの敬愛する水のように熱く語るのは,自惚れが過ぎる気がします。)

世界中見回しても、どんなに裕福な金持ちが,どんなにお金を積んでも,この「シャテルドン」以上の水は飲む事ができません。 これは奇跡の水なのです。

水にしてはあまりに高価なので,実際のところ、日本で飲める場所はほとんどありません。まずフランス料理店以外ではお目にかかれない事でしょう。
そのフランス料理店の中でも、極,極、稀に、リストに乗っている程度です。
そしてそのレストランは間違いなく敷居の高い超高級レストランであると思います。

さて、そのような,世界一の水がなぜこのクルティーヌに置いてあるのでしょう。世界一の「シャテルドン」をリストに載せるということの裏側で、正直大きなリスクも抱えているということは理解しております。

しかし、リストから外す事は絶対にありません。

その理由はただひとつ。

「カズ,シャテルドン持ってこい!」という言葉へのオマージュだからです。

あの時のあの空気、状況,哲学、意識、などをひっくるめたあの場所のあの時間へのオマージュ。
このラ・メゾン・クルティーヌの生みの親にして,僕が敬愛してやまない師、イヴ・シャルルへの尊敬の念の象徴でもあるのかもしれません。
僕の料理人としての人生そのものは,イヴ・シャルルとの出会い以降,イヴへのオマージュから成るところが多いと自覚していますが、そのオマージュのひとつの現れが,「阿佐ヶ谷の、こんな小さなまったく知名度のないレストランにもかかわらず、シャテルドンをリストに載せている」という事実なのだと思います。

オマージュとは、「尊敬の念をもって、至らないながらも真似をしたもの,あるいはその行動」と僕は解釈しております。

今までまともに考えを巡らさずに、ただ、「そうしたいからしてきた」シャテルドンをリストに載せるという事の意味を、改めて考えると,結構根の深い想いの上でしてきた事に気付かされました。ありがとうございます。自分を見つめるいいきっかけになりました。

っと、締めくくる前に。
このように、普通のレストランでは考えられない経緯のもとリストに載せている「シャテルドン」です。経営戦略でもなければ、売上げを上げるためのものでもありません。そもそもそんなヤリテではありません(汗。
逆に,パリの一つ星のレシピを頂いて,そのレストラン名まで頂いて,当時のワインリストも真似て,世界一を誇れる料理「カスレ」や、「熟成肉」まで引き継いで,パリで一ツ星レストランを築き上げてきたシェフの助言まで貰えて,そのハイレベルな交友関係のおこぼれにまで預かって,あげく,考えてみればこの世界一の「シャテルドン」まである状況・・・。(書きながら気付き、少々落ち込んで参りましたが、えいやっと最後まで書きますと)これだけ恵まれているのにこのレストランが満席にならないのは、料理の腕が悪いのか,はたまた経営手腕がわるいのか・・・。

と、いう分析からも分かるように(涙。利益重視の経営がまったく出来ない若輩者がずいぶん前に「これくらいの価格で飲めたら嬉しいよね。」と決めたシャテルドンの価格。他のどこよりも安いと思います。

それにさんざん脅かせて今更ですが,手が届かない程に価格が高いわけでもありません。世界の大富豪が飲む、これ以上は存在しないと言われる世界一の水。
それとまったく同じ物を、自分へのご褒美に、記念日のサプライズに、阿佐ヶ谷のこの小さな名もないレストランで味わうのもオツなものではありませんか。

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そういえば常連の方が仰っていました。

「こだわり抜いた美味しい料理を食べるのに,ワインとのマリアージュを非常に重視する傍らで、口を潤す水に無頓着であったことに気付きました。食事にミネラルウォーターを合わせるようになり、料理が一層味わい深く、おいしく感じられます。特にこのシャテルドンは、もう、雲泥に違いますね。」

毒を食らわば皿まで。

(少し使い方が違うかもしれませんが…)せっかく高価な食事をしているのですし,すこし背伸びをして、その本領のすべてを味わい尽くせるようテーブルの上にある全てにこだわり口福を得る。これ以上の美食はありません。

 

すいません、水だけで長くなりました。

ですが,実はもうひとつ世界一がこのレストランにはあります。もう少しお付き合い下さい(スイマセン)。

(ここからはまた少し長くなります。水だけでだいぶ盛り上がりましたし,読まれている皆様も、すでにお腹いっぱいだと思いますので,お疲れの方はブックマークにでも保存して,また時間のある時に、思い出したら、読んでみて下さい。)

 

世界一のカトラリー「ペルスヴァル」

「ペルスヴァル」とは、いま、世界中でグランメゾン(高級レストラン)が、テーブルに並べ初めている新進気鋭のナイフ会社です。日本でも多くの雑誌に取り上げられ、注目されています。

東京カレンダー 「ヴェリタ』      ・ウエブマガジン「OPENER」
「料理通信」               ・「料理通信2」

アラン・デュカスなどの三ツ星レストランをはじめ、世界中のシェフに愛用されているこの『ペルスヴァル』。それは刃物の街として有名なオーヴェルニュ地方ティエールのナイフ工房の名です。

2012年には、卓越した職人技、革新的な仕事をしている工房を取り上げるコンテスト「スター&メティエ」でグランプリを獲得し、以来日本のレストランでも愛用するシェフが増えてきました。

およそ100年前に作られたフランスのリモージュのアンティーク皿となる花の飾り絵皿とともに、クルティーヌのテーブルに置かれて皆様を迎えるテーブルセッティング。そこにあるテーブルナイフ「9.47」は、この「ペルスヴァル」というブランドの代表作です。

パリの一ツ星レストラン「ラ・メゾン・クルティーヌ」のオーナーシェフであったイヴ・シャルルが、自らの料理にぴったりの理想のテーブルナイフを求め、遂には自分の手で完成させてしまったモデルです。崩れやすい野菜のテリーヌから肉厚のフィレ肉ステーキまでストレスなくカットできてしまう理想のナイフ。
ナイフの柄にはいろいろな素材が用意され、それぞれに美しいことはもちろん、重厚であったり、ポップであったり、手触りや温度の心地よさであったり、持ち手に使用される木それぞれの違う香りを好みに応じて選ぶことができます。個性が光る秀逸な柄ばかりが用意されています。

当然、ナイフと対になるフォークや,スプーンなどにも「ペルスヴァル」のこだわりは有ります。全てのカトラリーを、そのこだわりまで語ると長くなるので、ここではフォークをご紹介させて下さい。
まずは一般的なフォークを思い浮かべてください。

いろいろなフォルムがあるでしょう。持ちづらそうな細いものから、重そうなものまでありますね。そしてその先端に3つ股か4つ股のヘッドがあります。先端は四角く潰れ、栗を刺そうと思ったら刺さらず転がっていったなんていう思い出もあるかもしれません。

さて、3つ股よりも4つ股のカトラリーの方が使い安いのは分かります。刺したものが安定しやすいですからね。ですが、もし5本となると幅広になり口にあたってしまいそうです。
ペルスヴァルのフォークも4つ股。もちろん全て手仕事です。ここではその4つ股に着目してください。
まずは口にあたる両端の2本。先端を尖らせてからわざわざ先端を削り、潰して口内を傷つかぬように配慮してあります。そして、中央の2本は両端よりほんの僅かに短くしてから、先端を尖らせて食材にストレスなく刺さるようにし、かつ、口内にはその先端があたらないように作り上げているのが分かります。
次に、そのペルスヴァル独特のヘッドの角度とフォルムに着目してみます。
そのフォルムは、持ちやすさと食べやすさ、口へ運んだ時の軌跡の美しさと、フォークを口へ入れた時の食べ手の姿勢の美しさにまで考えを巡らした結果のヘッドの角度とフォルムです。その曲線美によるフォルムの美しさもさることながら、その匠の心づかいの美しさに心が魅かれます。これぞまさにのペルスヴァルが世界のシェフや、食通達に認められる所以ではないでしょうか。
最後に艶の有無。
ペルスヴァルのカトラリーのヘッドを御覧ください。艶やかに磨き上げられています。
しかし持ち手へ視線を移してゆくと徐々に艶は消され、最後は完全にマットな仕上がりとなります。(クルティーヌのカトラリーはもう4年以上も毎日使い続けているので、傷がついて全体的にマットになってしまっているので,この限りではなくなっていますが、丁寧に使い続ければその艶の有無は見てとれます。
大体のカトラリーは艶があるタイプか、艶を消したマットなタイプの2種類に別れます。しかし、ペルスヴァルは、1本のカトラリーに艶のある部分と消す部分を作りました。
では、なぜそうしたのでしょう。一番シンプルで、最小限の装飾という美しさを求めた結果なのでしょうか。
はい、それもあります。しかし、そこは使用者の視点と、カトラリーの本質に立って考えるとよりペルスヴァルの価値観に近づくことができるように思います。
そもそも、カトラリーとは何か、という事です。
当然それは食事を口に運ぶためのものということになります。ですので、その先端は料理とともに口に入ることとなります。そのヘッドにおいて一番大切にすべきポイントは、清潔か、否か、ではないでしょうか。
ヘッドに艶がある。それは清潔を一番大切にしているが故に生まれる自然な配慮なのです。
では持ち手の方はどうでしょう。もし仮に手で触れる場所が、艶やかでありすぎたならば、使用したあとに指紋が浮き上がってしまうのではないかという心配を抱える紳士淑女がいないとは限りません(だいぶ大げさですが、真面目な話です(笑)。そしてその心配事や、その状況は、決してスマートな食事にあるべき心境であったり、スマートなワンシーンであるとは言えません。
そこで、「艶を消すことによりその心配事を根本から除いた」という結果が生まれるのです。
はたして、皆様は過去使用してきたカトラリーで、このように、配慮から艶の有無をコントロールしたカトラリーに出会ったことがあるでしょうか。
その配慮が美しさにいっそう磨きをかけているという事実。
あまりにも当たり前のように、理からもたらされた洗練と美が、同時に形となり、そこにある。それがペルスヴァルなのです。
ペウルスヴァルの職人達は彼らが携わる全てのものの細部にわたってこだわりを光らせます。細かくひとつひとつ説明していては読むのが大変なので端折りますが、彼らは、材質から、その曲線のライン、持ち手の温度と香り、角度、艶の有無、切れ味、長さ、重さ、重心にいたるまで、すべてに意味を与え、また、その意味に最高の技術で応える世界唯一の工房ということになります。
今までのカトラリーは、ただ、美しさ、テーブルの装飾の美として洗練されてきました。ですが、ペルスヴァルは、原点に真摯に向き合いました。
料理を切るため、食事をするために最高のカトラリーとナイフを追求する。そして、その過程において美しさも追求する。
極端にいえば、「ナイフや、フォークの本分を最高のレベルで全うさせるために追求するということを続けた結果得られたのが、そのフォルムの美しさであった」ということなのだと思います。
世界で語られる「ペルスヴァルの前にペルスヴァルなし」という言葉はまさにその象徴と言えるのではないでしょうか。
クルティーヌの全てを注ぎ込んだ料理をお召し上がり頂くためには,このカトラリーしかない、と思っています。
「ペルスヴァル」オーナーのイヴ・シャルルは、元々はパリ14区の一ツ星レストラン「ラ・メゾン・クルティーヌ」のオーナーシェフでした。
切れ味のよいテーブルナイフを探し求め、彼が出会ったのが、中世の時代から刃物の街として栄えるオーヴェルニュ地方ティエールの、Percevalの折り畳みナイフ [T-45]です。テーブルナイフの開発を依頼したものの難易度が高く、自らがPercevalのオーナーとなり一流のナイフ職人と研究に着手してもう10年近く。究極のナイフ作りが行われる工房の様子とその切れ味を移した動画があります。ぜひご覧ください。

「時代を切り拓くナイフ」

「ペルスヴァルの切れ味」 ← クリックするとその切れ味を動画で確認出来ます。

美しいそのフォルム。
『ル・フランセ』
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『ラドレ』ダマスカス仕様
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『ル・グラン』ダマスカス仕様
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あらためて、最初に戻りますが,フランス料理界の重鎮アラン・デュカスや、アラン・サンドランスのレストランにも採用され、パリ随一と呼ばれる肉屋のユーゴ・デノワイエーが依頼したステーキ専用モデル“888”までも存在する「ペルスヴァル』のナイフ。この“9.47”と呼ぶテーブルナイフは、非常に評価され、不動の地位を確立しつつあります。

ペルソヴァルのカトラリー

途中で少し触れましたが、この“9.47”はラ・メゾン・クルティーヌの初代オーナーシェフ、イヴ・シャルルが、2007年に当時パリの一つ星レストラン、ラ・メゾン・クルティーヌを僕に任せ、パリとオーベルニュを行き来しながら、作り上げたこだわりのナイフなのです。

それは親交の深いオーベルニュのワインの作り手ペイラーがレストランに来たおりに持っていた一本のナイフ「T–45」から始まりました。(その物語りはまたいつか改めて語りたいと思います。)

その後イヴはそのナイフ職人と意気投合し、理想のカトラリーを目指すことになります。そして、イヴとナイフ職人を引き合わせたペイラーの最高のワイン”9,47“の名をナイフにつけることで、ペイラーに対する感謝を表すこと(オマージュ)としました。こうして、食のスペシャリストといえる一つ星を持つシェフが手がける理想のカトラリーが誕生するのです。

イヴのこだわり。先にも話しましたが、それは、低温での焼き入れであったり、重さであったり、重心の位置であったり、素材に含まれる金属の配合バランスであったり、切れ味をよくする為のフォルムや手入れの仕方であったりしました。


そしてついには、デザインの一部であった艶をつけたり、消したりということを、きちんと理を持って、その2つの特徴から生まれる長所短所を活かし、カトラリーに艶のある部分と、消す部分をつけることに至っています。

僕は当時から、イヴが、レストランとは違うこの新しい事業に乗り出す展望や、思い、情熱を聞いてきたので、今日、日本のラ・メゾン・クルティーヌにおいて、イヴ・シャルルが手がける、このカトラリーを扱えることを、イヴとともに非常に充実した思いと満足感を持って、誇りとともにテーブルに並べております。

 

最後までお読み下さりありがとうございました。クルティーヌでは、他にもいろいろな想いを乗せて日々営業しております。

これからも皆様を、出来うる最高のシチュエーションでお迎えしたいと努力して参ります。「ミュー・ゾン・ミュー」(より良く)を繰り返し,成長を続けるレストランであり続けたいと思います。

 

皆様のご来店を心よりお待ちしております。

 

最後に、ペルスヴァルの価格などに興味のある方は  E-shop へ。こちらのページと同じ内容をご紹介したあと,価格をご案内しております。
※ クルティーヌブログの更新 は 毎回クルティーヌのツイッター(https://twitter.com/maison_courtine)にて御知らせしております。

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ラ・メゾン・クルティーヌ

Tel:03-6276-9938

住所:〒166-0004 東京都杉並区阿佐ヶ谷南3-37-10

HP:https://www.courtine.jp

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